良いCMSの条件
さて,ここまで「柔軟性」というキーワードでCMSの要件を見てきました。これらの要件を満たすCMSにはどういう製品があるでしょうか?
意外にも,「テンプレート&:リポジトリ型」の仕組みを持たないCMSが,市場には多数存在します。WYSIWIG型のページ編集機能を持つものやファイル管理型のCMSの場合,コンテンツとレイアウトが一体化しているため,仕様の変更が効率的に行えないため注意が必要です。
メディアプローブでは,さまざまなCMSをサイト開発で検討・採用してきましたが,現在では多くのプロジェクトで「WebRelease 2」を採用しています。その理由は,WebReleaseが先に挙げた条件を満たしているからです。
WebRelease の特長の1つとして挙げられるのが「テンプレート&:リポジトリ型」であることです。これは,レイアウトおよび構造を規定するテンプレートと,コンテンツデータを分離して保持するというデータ構造を持ちます。これにより,テンプレートに対して変更を加えると,過去のページすべてに自動的に反映させることができます。そのため,先にお話しした運用時のPDCAサイクルの施策を短期間で,何度でも適用することができるわけです。
また,WebReleaseの場合,テンプレートの要素を定義した段階で,コンテンツデータの入力が可能になります。これも「テンプレート&:リポジトリ型」のメリットの1つで,デザインの完成を待たずにデータ入力を始められるため,全体の開発期間を短縮することが可能になります。ページ数の多いサイトのリニューアルでは威力を発揮する機能です。
初期投資だけでなくTCOで判断
「柔軟性」を欠くCMSを採用した場合,どのような状況になるでしょうか。日々の更新作業をこなし,調整作業もなんとか乗り切った場合でも,何年かに1度はかならず次のサイトリニューアルを迎えることになります。そのとき,そのCMSを再度利用できるかどうかがコストの観点で大きな問題となります。
新たなリニューアルの要件に適応できず既存のCMSを捨てることになれば,投資が無駄になるだけでなく,コンテンツの再投入が必要になるため,リニューアルのコストも増大します。つまり,TCO(Total Cost of Ownership)の観点でコストを考えると,継続して利用できるCMSであることがコストを低減する最大のポイントとなります。
ときどき「使えないCMS~」「失敗しないCMS選び~」といったタイトルの解説記事を目にしますが,初期の要件に適合したCMSソリューションを運良く選べた場合でも,次回のリニューアル時に対応できなければそれは「使えないCMS」になり得ます。
つまり,ロングタームで見た場合に柔軟性に欠けるCMSは,たとえ当初うまく利用できたとしても,次回リニューアル時に適応可能かどうかはわかりません。
また,CMSを未導入のクライアントに理解されていないポイントとして,CMSが導入されるとページ数が加速度的に増加するということがあります。 CMS がない状態では,さまざまな要因が重なってページ追加の障害になっている場合があり,それらの障害が取り除かれた瞬間,予想しないペースでページが作成されるケースが見られます。
このような場合,CMS導入後,ページ数が一気に倍増するといった状況も想定されますが,CMSがそのボリュームを処理できるかどうかというパフォーマンスの観点も忘れてはならないポイントです。
WebRelease は,以前から数千ページの処理も可能な高いパフォーマンスを特長としていましたが,最新のバージョン2.3ではさらにマルチコアCPU上での並列処理に対応しました。その結果,4コア,8コア,とコア数が増加すると処理時間が格段に短縮されることになりました。これは,ニュースの速報性が問われる大規模なポータルサイトなどにとっては見逃せないポイントです。
アップルのラックマウントサーバXserve。最大で3.0GHzの8コアプロセッサを搭載可能。
企業とともに成長するCMS
世界経済が激動する中,Webサイトのみならず,それを運営する企業自身も環境の変化に柔軟に対応し,成長を継続する必要があります。今やWebサイトは企業活動の非常に大きなポーションを占める戦略的なマーケティングツールです。そのWebサイトを管理・運営するCMSは企業の成長とともに成長できることが求められるはずです。