マルチデバイス時代のWebサイトリニューアルはどうあるべきか? Web Professional編集部とメディアプローブは、2013年3月13日、「そのスマホサイト・アプリ、ユーザーは快適に使えていますか?〜マルチデバイス対応のWebリニューアルのポイント」と題したセミナーを開催した。
ユーザーファーストを目指したマルチデバイス対応
最初のスピーカーは、週アスPLUSのサイト運営や編集をはじめ、アプリの企画開発、SNSの運用を担当する週アスPLUSの坂本洋史ディレクター。
週刊アスキーは紙の雑誌をはじめ、Webメディア、スマートフォン向けアプリを展開している。坂本氏は、独自の視点を盛り込んだガジェット情報を提供するWebメディア「週アスPLUS」を立ち上げ、ユニークユーザー350万人、ページビュー1300万を超えるサイトに成長させた張本人とのこと。
コンテンツがさまざまなシーン、あらゆるデバイスで読まれるようになったいま、編集者・サイト運営者として坂本が特に注意を払っているのが「ページの表示時間」だという。じっくりと時間をかけて読み込む人が多いPCに比べて、スマートフォンユーザーはとにかくせっかち。移動中の空き時間など、短時間でさくっと記事に目を通したいユーザーに対して、いかに快適な閲覧環境を提供するかが課題と語る。
そこで、週アスPLUSでは2011年のサイトリニューアル時に、ワンソースで多様なデバイスへの情報発信が可能なレスポンシブWebデザインの採用を検討。だが、当時の端末と回線の状況では、レスポンシブWebデザインで満足のいく表示スピードを実現することが難しく、採用を見送ったという。
特にスマートフォンの場合は、ブラウザーよりもRSSを使った専用アプリを提供する方が快適な閲覧環境を提供できると判断。スマートフォンが普及するタイミングを意識しながら、2010年にはiPhoneアプリ、2011年春にはAndroidアプリ、2011年秋にはWindows Phoneアプリをリリース。2012年にはサイト全体をスマートフォンに最適化するなど、ユーザーの選択肢を毎年のように増やしていった。将来的には、レスポンシブWebデザインも利用する「ハイブリッド」の方向性も検討しているという。
マルチデバイス対応の鍵は、「タイミング」と「優先順位」と坂本氏。今後、多様なデバイスが登場するなかで、利用シーンが異なるユーザーに対して、単に画面サイズの適したコンテンツを提供するのではなく、最適化した見え方とコンテンツを提供する「ユーザーファースト」の考え方がマルチデバイス対応の鍵になるだろうと結んだ。
アスキーの坂本洋史ディレクター
マルチデバイス対応のWebリニューアル成功のためのCMS活用と情報設計
続いて、弊社代表取締役の渡辺 泰が、ポストPC時代のWebサイトのマルチデバイス対応について解説した。
2012年から2013年にかけてデバイスの多様化が急速に進んだ状況を振り返ると、2012年はさまざまなディスプレイが登場した年だった。iPhone 5やiPad mini 7、Google nexus 7(7インチ)、Amazon Kindle Fire HD(8.9インチ、7インチ)、Microsoft Surface——。続々とバージョンアップが進み、大量の新機種が増え続けるAndroidの現状も考えると、今後のWebサイトは「解像度」「OS」「ハードウエア」の3つの要素のかけあわせで考えていく必要があると語った。
渡辺は、デバイスの多様化が進む中で「最適化」と「汎用化」が鍵になると指摘する。アプリも含めてコンテンツをデバイスごとに読みやすくする「最適化」、レスポンシブWebデザインを採用して同じコンテンツを画面サイズにあわせて表示させる「汎用化」、いずれも一長一短がある。
最適化をすると、デバイスに適したコンテンツを配信するので表示速度は快適だが、手間とコストがかかる傾向がある。一方、汎用化は、ひとつのコンテンツを使うので効率的だが、PC基準で作ったサイトはスマートフォンで閲覧すると表示が遅くなる状況が発生する。
ただし、環境は整ってきており、最適化ではWebRelease 2などマルチデバイス対応のCMSなどのツールをうまく活用したり、汎用化ではレスポンシブWebデザインの専用ツールなどを活用したりして、効率的な運用も可能になっていると述べた。
最近の傾向としては、PCよりむしろスマートフォンやタブレットに重点を置いたコンテンツを作っておき、そこからPCへも配信する傾向が強まっていると渡辺は指摘。「Quarts」(リンク:http://qz.com)のような縦長デザインのWebサイトが増えている理由も、スマートフォンのインターフェースにユーザーが慣れてきた背景があると分析した。
「モバイルファースト」の流れの中で、アプリという選択肢も含めて、ユーザーに基点をおいた柔軟なWebサイトリニューアルが必要となってきていると結んだ。